日曜の午後、神楽坂を散歩していると、通りすがりの人がちらちらとある建物ををみつめています。
「???」
私の頭にはそれしか浮かびません。
この建物、いったい何なのでしょうか。
不気味さを感じながら、恐る恐るのぞいてみることにしました。
まず目に入ったのが、白くペンキが塗られた木の看板。
手書きの猫が2匹と、「ムギマル2」と書いてありました。
それでもよくわかりません…
あたりをぐるぐる見回すと、2つ目の看板を発見。
蔦の建物には小窓があいていて、そこにプラスチックの板がはさまっていました。
「コーヒー、マンジウ...」ここはカフェか?
やっと不安が少し消えました。
その左上には銭湯あがりの男の人の絵がかいてあります。
なぜカフェなのにこんな絵が描いてあるんだろう??
ますますよくわからなくなり、一旦退散をしようとしましたが、じわじわと好奇心が私の心を侵食し、ついに入ることを決めました。
写真4枚目、小さな穴から「ごめんください」と入ります。
まるで本当にトトロの隠れ家!
入ったはいいけれど、中はしんと静まり返っていて、どうしよう…一瞬後悔しました。
まるで異世界に足を踏み入れてしまったかのような。
当たり前ですが、トトロはいません。
入ってすぐには、椅子に座ったおじさんが1人。
左を向くと、「…お2階へどうぞ。」綺麗めのお姉さんが、2階へ案内してくれました。
その間に、店内に目をやったのですが、とにかく不思議!
昔ながらのデッキ、電話、謎のTシャツや雑貨が飾ってあります。
隠れ家に誰かが住んでいるんでしょうか。私はそう思うことにしました。
写真3枚目には、段ボールの上に手書きで「マツ子さん長男トン」「三代目寸ちゃん」と書かれたものがありました…最後まで解読不可でした。
とりあえず、店員さんが待つ2階へあがります。
どうやらここは一軒家住宅なのだろうか。階段をのぼりながら、そう感じました。
いったい2階がどうなっているのか、想像もつきません。
おそるおそ~る顔をあげると?
びっくりしました。
まるで宴会のように人でにぎわっていたのです。
「そちら空いていますが、相席でもいいですか?」とのこと。
1人で来てしまった私は、女子会をしている人のテーブル、お部屋の隅にちんまりと腰掛けました。
すっごく賑わっている…もしかしたらここはオシャレ通が知る、隠れ家カフェなのか?だんだんと明るい気分になってきました。
部屋中にも先ほどの蔦が無数に張り巡らされ、妙に落ち着いてしまう。
まるで何十年もの時を経てコアなファンに温められてきたカフェなのでは。
そしてやはり猫の絵が描いてありました。
猫ちゃんはどこにもいませんでしたが、このお店のトレードマークなのでしょうか。
席に一枚の紙が置いてありました。
どうやらこれがメニューのようです。
一番印象的だったのは、小学校の図工の授業で教わる版画のようなイラストがメニュー一面にちりばめられていたこと。
魔法のアラジンのポットのような絵や、小鳥のような絵…いったいこのカフェ、和カフェなのかなんなのか、どこに分類していいことやら!(笑)
どこまでもこだわりぬいて作られていますね。
こすったら消えてしまいそうな字を解読。
どうやら看板メニューは手作りの「マンヂウ」みたいです。
「まんじゅう」を「マンヂウ」と書くあたり、まるで明治時代にスリップしたかのよう。
さっそく、マンヂウ(180円)と、ホットコーヒー(550円)を注文してみました。
いったいどんなものが運ばれてくるのか?
ドキドキです。
待ち時間に、もう一度部屋をグルグルと眺めてみることにしました。
階段の踊り場に置かれていたのは、昆虫ケースに閉じ込められた猫のぬいぐるみ...無造作に入れられた猫の写真、割れた鏡(これもインテリアの一部⁉)と富士山の絵画、誇り被った謎の本。
どれもこれも他のカフェにはないような斬新さとレトロを超越した、ディープな小物が置いてありました。
そして私の座っていた席の真後ろには、絞り染めしたようなカラフルな暖簾がかかっていました。
そこから何やらオーナーの私物らしきものがちらり…
非常に気になりましたが、見なかったことにしてサッと暖簾を元通りにしました。
10分弱して、マンヂウとコーヒーがきました。
正直マンヂウは、まるっこい小ぶりなまんじゅうをイメージしていたので、この大きさと豪快さにもまたびっくり!
作りたてなのか、アツアツで香ばしい匂いがします。
(まさか、これを食べたら元の世界に戻れなくなるのか⁉)そんなことを考えながら、
ここでも慎重に、、一口パクリ。
…。
…。
どこかで味わったことがある。
…。蒸しパンだ!
どこか懐かしいような、発酵した匂いのする蒸しパンでした。
よもぎの香りもほんのりします。モチモチフカフカの生地にはチーズが練りこまれていておいしい。
最初のお店の印象が”なんだか奇妙”だったので、蒸しパンを食べて不覚にもほっとしました。
コーヒーはブレンドです。
コクも苦みも酸味も普通のコーヒーのおいしさ。だけど落ち着く!
マンヂウとコーヒーのセット、最強です。
無心でほおばってしまいました。
あっという間に平らげて、ちょっと名残惜しさが残る「ムギマル2」にバイバイをします。
帰りの階段で新たな発見。
やっぱりなんだかわからない絵が飾ってありました。
昔童話でみた、「スーホの白い馬」に似ているかもしれません。
日本にいるのだか、はたまたこの地球にいるのか、完全にこの空間に馴染んでしまった私は知る由もなく、お会計に。
「このお店はどれくらい経つのですか?」と質問をすると、
「10年ぐらいですね。」とのこと。
す、すごい…!
たったの10年でこんなに知名度を上げているとは!!
外観は全く何のお店なんだかわからないのに、入ってみるとすべてをさらけ出されたような明るい空間になっている。
なのに普通のカフェではない。
みるみるうちに虜になってしまいました。
【営業時間】12:00~21:00
【定休日】水曜日
【店舗HP】http://www.mugimaru2.com/