その昔に富士山の度重なる噴火で湖が涸れ、富士山を水源とするいくつかの池が残り、その代表的な池が忍野八海なんだとか。
ちなみに「なんで池なのに海なの?忍野八池でいいじゃん!!」なんて思ったそこのあなた。
忍野八海は江戸時代、富士山に入山する前に訪れる巡礼地だったそうです。身を清めるための富士山が水源の八つの池…池と呼ぶにはもったいない!と、いうことで「忍野八海」と名付けられたそうですよ。
じゃあさっそく出発!…ではなく。
この忍野八海にはおすすめの回り方がありました。
富士山入山前の巡礼地である神聖な忍野八海には、法華経の教えに基づき各池に八大竜王が祀られ、石碑に和歌が刻まれていると。さらに八つの池は占星術により北極星と北斗七星の形(確かに地図を見てみると似てる…)に並んでいると。
なんだか少し難しいですが、巡礼地というだけあって一番霊場から八番霊場まで禊の順番がしっかり決まっているそうです。
せっかくなので私たちもその順番に沿って巡ってみました。
地図は「忍野村観光案内所」でもらえます。
スマホなどで調べてももちろん出てきますが、観光案内所で様々な説明などを聞くのも楽しいですね。
地図を持って、さあ出発!!
スタート地点は北極星を表す「出口池」です。
他の七つの池からは歩いて10分程離れていて、北極星を表す池だそうです。
桂川の水源の一つとなっているこの出口池は忍野八海の中で一番大きい池です。
隣に民家が一軒あるだけで、とても静かな場所にしっとりと佇んでいました。周りをぐるっと歩けるので、緑の中から池を覗くのもいいですね。
祭神:難蛇(ナンダ)竜王
和歌:天つちの ひらけるときに うごきなき 御山の水の 出口と(た)ふとし
忍野八海の中心地へ戻り、二番目の池「お釜池」です。
このお釜池、石碑があった場所の先を見ても池らしきものが見えず戸惑いましたが、それでも先に進んでみて発見しました!
出口池に対しこのお釜池は一番小さな池です。
しかし水量は豊富で、池の中の大きな穴の透き通る蒼がなんともすてきでした。写真を撮る彼も吸い込まれてしまいそう…(笑)
ちなみにこのお釜池、ルートが二つあり、もう一つの入り口にはこんなにわかりやすい水車の目印がありました…。
祭神:跋難蛇(バツナンダ)竜王
和歌:ふじの根の ふもとの原に わきいづる 水ぞこの世の おかまなりけり
三番目の池の「底抜池」は「榛の木林資料館」の中にあり、唯一お金を払わなければ見れない池です。
忍野村最古の茅葺き民家を開放した資料館で、当時のままの家具や家財道具、蚕の養殖場、徳川時代の武具や重要書類など内容が盛りだくさんの資料館の入場料はたったの300円!
小さな滝が流れていたり、これでもかというほど鯉が泳いでいる「鯉の池」があったり、なによりも茅葺き屋根のおうちと富士山のコラボレーションが最高でした!
そして目的の「底抜池」です。
底抜池は忍野八海の中で一番昔の風景を保っているそうです。また、底抜池で洗物を落とすと消えてしまい、しばらくするとお釜池から浮き出てくるという伝説が残っているんだとか。そのため、底抜池とお釜池は地底で水脈が繋がっていると言われているそうです。
水深が浅く透明度が高い底抜池を、ひんやりとした雰囲気の中でゆったりと楽しめました。
祭神:娑加羅(シャガラ)竜王
和歌:くむからに つみはきえなん 御ほとけの ちかひぞふかき そこぬけの池
四番目の池は「銚子池」です。
その名の通りお酒を注ぐ銚子の形に似て…るかどうかはちょっとわかりませんでした(笑)
銚子池は池の底の砂を巻き上げて水が湧いているのがよく見えるとのことで、その水源を探してみると、入り口からみてちょうど正面奥らへんで見つけました。
そしてこの銚子池、なんと縁結びの池とも言われているそうですよ。
実はその昔、ある家の花嫁が身投げをしたという悲しい伝説が残っているそうですが、今は縁結びの池なんだそうです。その花嫁さんがみんなを見守ってくれているのかもしれないですね。
祭神:和脩吉(ワシュキツ)竜王
和歌:くめばこそ 銚子の池の さわぐらん もとより水に なみのある川
五番目の池「湧池」は湧水量が一番多く、忍野八海を代表する池です。
写真では世界がもうひとつあるのかと思わせる程見事に空や樹が水面に映り込んでます。
これもきれいなのですが、実際に見るとコバルトブルーやエメラルドグリーンといった水色がとてもきれいで、思わず声が出てしまうくらい感動しました。
池の中には水の流れに揺れるセキショウモや泳いでいる鯉と共に投げ込まれた小銭が見えます。しかしこの池に小銭を投げ込むのは禁止されていますのでご注意ください!
またこの湧池の水はNASAが宇宙で雪を作る実験を行ったときに使用されたそうです。
こんなきれいな水からは、それはそれはきれいな雪が作られたんでしょうね…(実験結果はあえて調べていません!(笑))
祭神:徳叉迦(トクシャカ)竜王
和歌:いまもなほ わく池水に 守神の すへ(ゑ)の世かけて かわ(は)らぬぞしる
阿原川に注いでいる水面が美しいのは六番目の池「濁池」です。
今でこそ水の中でゆらめく水草が見える程透き通っている濁池ですが、昔は名前通り濁っていたそうです。
みすぼらしい行者がこの池の地主に一杯の水を求めのに断られ、その瞬間から池の水が濁ってしまったという伝説が残っているそうです。
どんな時も人には優しくしようと改めて思える伝説ですね。
祭神:阿那婆達(アナバッタ)竜王
和歌:ひれふらす 龍の都のあらましき くみてしれとや にごる池水
細長い三日月のような形の池が七番目の「鏡池」です。
池の水面には富士山が鏡のように映るのが、名前からもわかりますね。
この日は富士山自体が空に少し同化してしまっていたのでちょっとわかりにくいですが…しっかりと水面に富士山が映っていました。
この池にも伝説は残っていて、この池はすべての善悪を見分けると言われているそうです。
祭神:摩那斯(マナシリ)竜王
和歌:そこすみて のどけき池ハ これぞこの しろたへの雪の しづくなるらん
「菖蒲池」が忍野八海のゴール地点です。
自生しているキショウブと石碑越しに見える富士山が美しい菖蒲池。初夏にしか見ることのできないキショウブの花を狙って行くのが言わずもがなおすすめです。
6月頭に行ったのですが、首都圏の初夏と山梨の初夏は少しズレがあるのでしょうか…花は見れませんでした。
しかし茅葺き屋根と葉菖蒲、そして富士山、菖蒲池の組み合わせもとてもきれいでした。
祭神:優鉢羅(ウハツラ)竜王
和歌:あやめ草 名におふ池ハ くもりなき さつきの鏡 みるここちせり
以上の八つで「忍野八海」です。
八つの池をすべて回ると意外とのども乾きます。
そのため最後は濁池と鏡池の間くらいにある売店に寄ってみてはいかがですか?
お土産やソフトクリームの販売があり、なにより、富士山の湧き水が飲めるんです!
キンと冷えていて、口の中から胃に届くまで水が通るのがわかります。
この湧き水はペットボトルに入れて持ち帰ることも可能です。また、1.5リットルのペットボトル容器も販売していました。
さらに、その湧き水の真後ろには「中池」という池があります。
中池は忍野八海とは特に関係のない人工池ですが、どこまでも透き通っていて鯉が優雅に泳いでいるのがはっきりと見えます。
首都圏からの日帰り旅行もできちゃう富士山周辺。
水辺が涼しくて気持ちいい夏は、その中でもぜひ「忍野八海」へいってみませんか?
[忍野八海(忍野村)公式HP]
http://www.vill.oshino.yamanashi.jp/8lake.html