目黒のサンマという落語があります。あらすじはこんな感じ。
とある殿様が目黒まで出たかけた際に、供が弁当を忘れてしまいました。一同腹をすかせているところに、殿様が嗅いだことのない旨そうなさんまの匂いが漂ってきます。当時さんまは庶民の食べ物で、殿様が食べるようなものではありませんでした。供は止めたものの、そんなことを言っている場合でもなく、供にさんまを持ってこさせました。調理法も、網や串、金属などを使わないサンマを直接炭火に突っ込んで焼く「隠亡焼き」と呼ばれる庶民流の焼き方。しかし食べてみると非常に美味しい。殿様は、初めて食べたさんまを大変気に入りました。
それからというもの、殿様はさんまを食べたいと思うようになります。ある日、殿様の親族の集会で殿様がさんまを出すように言いますが、庶民の魚であるさんまなど置いていない。そこで家臣は急いで日本橋の魚河岸からさんまを買いつけます。
そして、今度は殿様にふさわしい調理法をしようとさまざまに工夫します。さんまを焼くと脂が多く出ますが、それでは体に悪いということで脂をすっかり抜き、また骨がのどに刺さるといけないと骨を一本一本抜いて、すると形が崩れてしまったので、椀の中に入れて出す。日本橋魚河岸から取り寄せた新鮮なさんまですが、家臣のいらぬ世話により醍醐味を台なしにした状態で出され、かえって不味くなってしまいました。殿様はそのさんまが以前に食べたものと違ってまずいので、「いずれで求めたさんまだ?」と聞くと「はい、日本橋魚河岸で求めてまいりました」と家臣は答えます。「ううむ。それはいかん。さんまは目黒に限る」。殿様が、海と無縁な場所(目黒)でとれた魚の方が美味いと信じ込んでそのように断言する、というくだりがオチの落語です。
この話を私は目黒で魚を食べるたびに思い出すのですが、今回はそんな目黒で絶品の鰻を頂きました。
目黒駅からは徒歩数分。
店構えから雰囲気のある老舗鰻屋さん。仕出しが多いのか、席数は少なめでした。(都民の方は、お持ち帰りもありかもしれません!)
そして、このレトロな店内!おばあさまがここら辺が空襲で焼けた直後の話、そして目黒が開発されていく様子などお話くださいました。
ふかふかの絶品鰻!上品だけど贅沢でもあって…この世で一番上質な食体験のうちの一つかもしれません!
京都から来た、とおばあさまにお話すると、「関西風よりもあっさりしているでしょう?」
関東(江戸前) 鰻は背中から背開きで、白焼きにして蒸します。甘くないあっさりしたタレが江戸前風鰻の特徴です。
七味をかけるとまた味わい深い。そしてまた鰻のお吸い物ではゴージャスな旨味と、鰻の余韻を堪能できます。
老舗の服飾専門学校、「ドレスメーカー学院」からその名を取ったドレメ通りを通って、能楽堂に向かいます。
意外とモダンな外観。
ちなみにこの時は、狂言を見に行きました。(実は、京都の茂山家の襲名披露公演だったので、厳密には京都の歴史を感じたのかもしれませんが…笑)
現代狂言(つまり新作の狂言)も会場ではうけていましたが、襲名したての茂山千之丞による花子が圧巻でした。
この能楽堂では、このように上方の芸能もみられますし、さまざまな演目が用意されています。
また、喜多能楽堂のウェブサイトでは、この能楽堂以外を会場とする、喜多流の公演スケジュールも確認できます。